【体験談】ワーケーションで探る、移住後の「家族収入戦略」:リモートワーク以外の収入源と生活コストの見極め方
はじめに
移住や二拠点生活をご検討されているリモートワーカーの皆様、特にご家族帯同を想定されている方にとって、新しい生活での経済的な側面は重要な検討事項の一つかと存じます。リモートワークによる収入が継続できるとしても、移住先の物価や、予期せぬ出費、そして何より家族全体の経済的な安定をどのように築くか、漠然とした不安を感じることもあるでしょう。
「ワーケーション移住スタイル図鑑」では、移住を最終目標としたワーケーションの活用事例を多数ご紹介しておりますが、今回は特に経済面に焦点を当て、「移住後の家族収入戦略」をワーケーションでどのように具体的に検討・検証できるか、そしてそこから見えてくるリアルな体験談について掘り下げてまいります。単に「生活費が下がるらしい」といった情報に留まらず、ご自身の、そしてご家族の具体的な状況に合わせた経済計画を立てるためのヒントを提供できれば幸いです。
移住後の経済構造の変化を理解する
移住によって、家計の構造は様々な形で変化する可能性があります。主に以下のような点が挙げられます。
- 収入の変化: リモートワークによる収入が基本となる場合でも、会社の規定変更や自身のキャリアパスによって変動する可能性はゼロではありません。また、地域での新たな仕事、副業、兼業、あるいは配偶者の働き方など、収入源が多様化または変化する可能性があります。
- 生活コストの変化: 家賃や住宅ローン、食費、交通費、水道光熱費などは地域によって大きく異なります。また、子育て関連費用(保育料、学費、習い事など)や、地域独自の活動費、交際費なども考慮に入れる必要があります。
- お金を取り巻く環境の変化: 地域の金融機関の利便性、行政サービスの利用に伴う費用、特定の地域で利用できる助成金や支援制度なども、家計に影響を与えます。
これらの変化を机上で把握するだけでは、リアルなイメージを持つことは難しいものです。そこで、ワーケーションが有効な手段となります。
ワーケーションで探る「家族収入戦略」の実践例
ワーケーションを単なるリモートワーク可能な旅行としてではなく、移住後の経済的なリアリティを探るための「調査活動」と位置づけることで、より具体的で実践的な情報を得ることができます。以下に、いくつかの活用事例をご紹介します。
事例1:生活コスト詳細記録型ワーケーション
移住候補地に1週間から数週間程度滞在し、実際に生活を送る中でかかった費用を詳細に記録します。
- 実践例: 候補地のスーパーで食料品や日用品を実際に購入し、物価感を掴む。公共交通機関やガソリン代の目安を確認する。地元の不動産情報サイトで家賃相場を調べるだけでなく、地元の不動産業者を訪ねて生の声を聞く。図書館や児童館など、生活関連施設を利用してみる。可能であれば、候補地在住の移住経験者や地元住民に、水道光熱費の平均や地域特有の出費について尋ねてみる。
- ポイント: 観光客ではなく、生活者としての視点で行動することが重要です。普段の生活で利用するような場所を中心に回り、具体的な費用を記録することで、移住後の生活費のイメージが格段にクリアになります。家族帯同の場合は、お子様の年齢や状況に合わせた費用(例:公園利用料、習い事教室の見学、学用品の価格帯など)もチェックリストに加えることをお勧めします。
事例2:地域経済探査型ワーケーション
移住候補地の経済環境や仕事の可能性について、積極的に情報収集を行います。
- 実践例: 自治体の移住相談窓口や産業振興課を訪ね、地域の主要産業や企業、創業・副業支援制度について情報収集を行う。地域のハローワークや求人情報サイトで、どのような仕事があるか、おおよその給与水準はどのくらいかを確認する。地域のコワーキングスペースやイベントに参加し、同じように移住を検討している人や、地域で働く人々と交流を持つ。自身のスキルや経験を活かせる可能性のある地域ビジネスやNPOなどをリサーチし、可能であれば関係者に話を聞く機会を持つ。
- ポイント: リモートワーク以外の収入源、例えば地域での兼業や副業、あるいは家族(特に配偶者)が地域で働く可能性を探ることは、家族全体の収入戦略において非常に重要です。ワーケーション中にアンテナを高く張り、積極的に人との繋がりを求めることで、思わぬ仕事の機会や地域経済に関するリアルな情報にアクセスできることがあります。
事例3:家族会議型ワーケーション
ワーケーション期間中に、家族で将来の生活や経済状況についてじっくり話し合う時間を持つことも有効です。
- 実践例: 現地で得た生活コストや仕事の可能性に関する情報を家族で共有し、率直な意見交換を行う。移住によって生まれる経済的なメリット・デメリットについて、家族全員が納得できるまで話し合う。子供たちの教育費や将来の希望、そしてそれにかかる費用についても、具体的な場所や情報を見ながら話し合う。
- ポイント: 移住は家族にとって大きな変化です。経済的な面も含め、家族全員が納得し、協力していく体制を築くことが、移住後の成功に繋がります。ワーケーションという非日常の環境は、普段忙しくてじっくり話せないテーマについて、家族で向き合う良い機会となります。
リアルな体験談:成功と課題
実際にワーケーションを経て移住された方々からは、様々な経済的な変化や気づきに関する体験談が寄せられています。
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成功談の一例: 「ワーケーションで滞在中に、地域の方から畑仕事のヘルプやイベント運営の手伝いの声がかかり、それが小さな収入に繋がりました。当初はリモートワーク収入だけを頼りにするつもりでしたが、地域で働くという新しい選択肢が生まれ、生活にも張りが出てきました。生活コストも想定以上に下がったため、家族の経済的な安定感が増したと感じています。」(30代、ITエンジニア、妻・子1人と移住)
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課題・失敗談の一例: 「ワーケーションで生活費を計算したつもりでしたが、実際に住んでみると、地域独特の祭りへの寄付や、車が必須になったことによる維持費など、想定していなかった出費がいくつかありました。また、地域での副業を期待していましたが、なかなか自分のスキルを活かせる仕事が見つからず、収入面で少し苦労した時期もありました。」(40代、Webディレクター、夫・子2人と移住)
これらの体験談からわかるように、移住後の経済状況は多様であり、事前の想定通りにいかないこともあります。ワーケーションを通じてリアルな情報を得ていたとしても、計画通りにいかない可能性も考慮し、ある程度の経済的なバッファを持つことや、複数の収入源を持つことの重要性が浮かび上がります。
課題を乗り越えるための視点
ワーケーションで移住後の経済的な課題が見えてきたとしても、それは移住を諦める理由ではなく、より良い計画を立てるための貴重な情報です。
- 複数の候補地での比較: 一つの候補地だけでなく、複数の地域でワーケーションを行い、それぞれの生活コストや仕事の可能性を比較検討することが有効です。
- 収入源の多角化: リモートワーク収入に加えて、地域での短期の仕事、オンラインでの副業、投資など、複数の収入源を持つことを検討することで、経済的なリスクを分散できます。
- 家族での情報共有と合意形成: 移住後の経済的な状況について、良い面も課題も隠さず家族で共有し、協力して乗り越えていく意識を持つことが重要です。
- 自治体の支援制度活用: 多くの自治体が移住者向けの住宅支援や起業支援などを行っています。これらの制度を事前に調べ、ワーケーション中に担当者に相談してみることで、家計の助けとなる情報が得られるかもしれません。
まとめ
移住後の生活を経済的に安定させるためには、事前の計画と情報収集が不可欠です。ワーケーションは、移住候補地のリアルな生活コストや、リモートワーク以外の収入源の可能性、家族全体の経済戦略を具体的に検討するための非常に有効な手段となります。
単なる「お試し暮らし」に留まらず、生活者としての視点で地域の経済環境を観察し、具体的な費用を記録し、積極的に人との繋がりを持つことで、机上の空論ではない、地に足の着いた経済計画を立てることができます。成功談だけでなく、課題や失敗談からも学びを得て、柔軟な計画を立てることで、移住後の経済的な不安を減らし、家族にとってより豊かで安定した暮らしを実現するための大きな一歩となるでしょう。
この記事が、皆様の移住・二拠点生活に向けたワーケーション計画の一助となれば幸いです。