【体験談】ワーケーションで探る自然の中での子育てとリモートワークの両立:家族で体験した地方暮らしのリアル
移住や二拠点生活をご検討のリモートワーカーの皆様、特にご家族での移住を視野に入れている皆様にとって、最も気になる点の一つに「移住先での子育て環境」があるかと存じます。そして、それを現在のリモートワークという働き方とどう両立させるかという課題も、多くの方が抱えている懸念ではないでしょうか。
特に、都市部での子育て経験が長い方ほど、自然豊かな環境での子育てに憧れを抱きつつも、実際の生活や仕事への影響が未知数であることから、一歩踏み出せないこともあるかもしれません。
「ワーケーション移住スタイル図鑑」では、こうした皆様の疑問や不安を解消するため、移住・二拠点生活を見据えたワーケーションの具体的な活用事例と、そこから得られるリアルな体験談をお届けしております。
今回は、IT企業にお勤めのご夫婦が、小学校低学年のお子様とともに、自然豊かな地方でワーケーションを体験し、「自然の中での子育て」と「リモートワーク」の両立可能性を探った事例をご紹介いたします。
ワーケーションで確かめたかったこと:自然環境と子育て、そして仕事
今回ご紹介するAさんご一家は、東京都内にお住まいの30代後半のご夫婦と、お子様一人のご家族です。ご主人はIT企業のリモートワーカーで、奥様もフリーランスとしてご自宅でお仕事をされています。
数年前から地方移住に関心をお持ちでしたが、お子様の教育環境や自分たちの仕事への影響を考え、具体的な行動には至っていませんでした。特に、お子様にもっと自然の中で伸び伸びと育ってほしいという願いがありつつも、学力面や習い事、そして都市部とのギャップに不安を感じていたといいます。
そこでご一家は、移住候補地として考えていた、海や山が近く自然体験が豊富で、かつサテライトオフィスやコワーキングスペースの整備が進んでいる某地方都市を選び、2週間のワーケーションを実施することにしました。
このワーケーションでAさんご一家が特に確かめたかったことは以下の点でした。
- 自然豊かな環境が子供の成長や家族のコミュニケーションにどのような影響を与えるか
- 自然の中での子育てと、リモートワークという働き方が両立できるのか
- 地域における子育て支援や教育環境はどのようなものか
- 家族全員がその土地の雰囲気や文化に馴染めるか
自然の中での子育て体験:子供の変化と親の気づき
ワーケーション期間中、Aさんご一家は自然体験に積極的に取り組みました。近所の里山で虫取りをしたり、海岸で貝殻を拾ったり、地元の子供たちが集まる公園で一緒に遊んだり。
お子様は最初、都会の公園とは違う虫や植物の多さに戸惑いもあったようですが、すぐに慣れて夢中になって遊ぶようになったといいます。泥だらけになって帰ってくる毎日でしたが、表情は生き生きとしていました。また、地域の子供たちとの交流も自然に生まれ、すぐに友達を作ることができました。
親であるAさんご夫婦は、お子様が自分で遊びを見つけ出す力や、自然の中での好奇心が引き出される様子を目の当たりにし、自然環境が子供の成長に与える影響の大きさを実感しました。また、家族で自然の中で過ごす時間が増えたことで、会話が増え、共通の体験を通じて絆が深まったと感じています。
リモートワークとの両立:環境と時間の使い方
一方、リモートワークについては、都市部とは異なる環境での調整が必要でした。
ご主人は、滞在先のコワーキングスペースを利用しました。高速インターネット環境は整備されており、仕事に集中できる空間が確保されていました。しかし、移動時間がかかることや、自宅で仕事をする奥様との情報共有がしにくいといった課題も感じたといいます。
奥様は滞在先の宿泊施設で仕事をしましたが、慣れない環境や、自然の中で遊びたいお子様の声を聞きながらの仕事に、集中力を保つのが難しい場面もあったようです。
しかし、このワーケーションを通じて、仕事のオンオフを意識的に切り替えることや、家族それぞれが集中できる時間帯や場所を工夫することの重要性を学びました。午前中は仕事に集中し、午後は家族で自然の中で過ごすといった、メリハリのある時間の使い方が可能であることも確認できました。
地域の子育て環境とコミュニティへの関わり
滞在中に地域の図書館や児童館、公園などを訪れ、子育て支援施設の雰囲気や利用状況を確認しました。また、地域のイベントに参加したり、商店街の人と話をしたりすることで、地域住民との自然な交流も生まれました。
地域の子育てイベントで知り合った他の移住者や地元の方々から、保育園・学童の状況、地域の小学校の雰囲気、習い事の選択肢など、ウェブサイトだけでは分からないリアルな情報を得ることができました。
こうした交流を通じて、地域の温かさや、子育て世代をサポートしようという姿勢を感じることができ、移住後の地域コミュニティへの適応に対する不安が和らいだといいます。
直面した課題とそこから見えたこと
もちろん、良い面ばかりではありませんでした。
例えば、交通の便が悪く、車なしでは生活が難しいことを痛感しました。また、特定の習い事の選択肢が限られていること、医療機関へのアクセスに不安を感じる場面もありました。
さらに、自然環境ゆえの虫の多さや、天候に左右される生活リズムなども、都市部での生活に慣れた家族にとっては慣れが必要な点でした。
これらの課題は、実際にその土地で生活してみなければ分からなかったことばかりです。しかし、こうしたリアルな「壁」に直面したことで、移住後に何を重視すべきか、どのような準備が必要かといった点が明確になりました。
ワーケーションから得られた結論と次のステップ
2週間のワーケーションを終え、Aさんご一家は自然の中での子育てが、お子様だけでなく家族全体にとって非常に価値のある経験であったと確信しました。リモートワークとの両立についても、工夫次第で可能であるという手応えを得ました。
一方で、生活の利便性や特定のサービスへのアクセスなど、都市部とのギャップも肌で感じました。これらの情報を総合的に判断した結果、当初検討していた候補地は「理想にかなり近いが、いくつか譲れない点がある」という結論に至りました。
しかし、このワーケーションは決して「失敗」ではなく、移住候補地を絞り込む上で非常に価値のある経験でした。これにより、Aさんご一家は次のステップとして、今回見えた課題をクリアできる別の候補地を複数選定し、再度ワーケーションで比較検討を進める計画を立てています。
まとめ:ワーケーションで「リアル」を掴む価値
移住・二拠点生活は人生における大きな転換点です。特にご家族での移住となると、考慮すべき点が多岐にわたります。漠然とした憧れや情報収集だけでは見えてこないリアルな生活のイメージを掴むためには、実際にその土地で一定期間生活してみることが何より重要です。
今回のAさんご一家のように、ワーケーションを通じて「自然の中での子育てとリモートワークの両立」という、移住後の生活における重要な要素を体験することで、理想と現実のギャップを埋め、より現実的な視点で移住を検討することが可能になります。
自然豊かな環境での子育てに関心があるリモートワーカーの皆様は、ぜひワーケーションを活用し、ご家族にとって最適な暮らしの場を見つけるための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。