【体験談】複数回ワーケーションで移住候補地を比較検討:絞り込みの視点とリアルな体験談
移住や二拠点生活をご検討されているリモートワーカーの皆様にとって、最適な移住先を見つけることは非常に重要なステップです。多くの情報を収集し、現地を訪れる中で、候補地が複数出てくることも少なくないでしょう。本稿では、そうした複数の移住候補地の中から、ご自身やご家族にとって本当に合う場所を見つけ出すための比較検討の方法と、複数回ワーケーションを活用した具体的な体験談をご紹介いたします。
移住候補地選びの難しさとワーケーションの有効性
インターネットや移住フェアで情報を集めることはできますが、実際の暮らしをイメージするには限界があります。特に、仕事環境、生活コスト、地域コミュニティ、子育て環境といった、日々の生活に直結する要素は、短期間の旅行だけでは見えにくいものです。
そこで有効となるのがワーケーションです。一定期間その土地に滞在し、普段通り仕事をしながら暮らすことで、観光では得られないリアルな情報を肌で感じることができます。さらに、移住候補地を複数箇所に絞り込んでいる場合、それぞれの場所でワーケーションを経験することは、比較検討の精度を格段に高めることにつながります。
なぜ複数回ワーケーションで比較検討するべきか
一度のワーケーションである程度の情報を得ることは可能ですが、一つの視点に偏ったり、その時の天候やイベントなどに影響されたりする可能性もゼロではありません。また、別の地域と比較することで初めて気づく、その土地特有の「良さ」や「難しさ」も存在します。
複数の候補地でワーケーションを実施することで、それぞれの地域の特性を多角的に捉え、ご自身やご家族にとって本当に重要な要素は何なのかをより明確にすることができます。例えば、A市ではネット環境が非常に快適だったが買い物が不便、B町では地域住民との交流が盛んだったが医療機関が少ない、といった具体的な違いを体験として理解できるのです。
移住候補地比較検討のための具体的な視点
複数の候補地を比較検討する際、どのような点に着目すれば良いのでしょうか。ご家族構成やライフスタイルによって優先順位は異なりますが、ここでは多くの移住検討者が重視するであろう一般的な視点をいくつかご紹介します。
- 仕事環境: リモートワークに必要な安定したインターネット環境、静かで集中できる作業スペース(自宅、コワーキングスペース)、オンライン会議のしやすさなどを確認します。候補地ごとのコワーキングスペースの有無や使い勝手も重要な比較ポイントです。
- 生活コスト: 家賃相場、食料品や日用品の物価、水道光熱費、交通費(ガソリン代、公共交通機関の利用頻度)、レジャー費、子育て関連費など、実際に暮らす上での全体的なコスト感を把握します。自治体の移住支援制度や助成金なども含めて比較検討します。
- 地域コミュニティと人間関係: 地域住民の雰囲気、自治会活動や地域のイベントへの参加機会、移住者に対する受容性などを肌で感じ取ります。積極的に地域の方と交流する機会を持つことも重要です。
- 子育て環境: 近くに利用できる保育園や学校があるか、教育方針は合うか、習い事の種類やアクセス、子供が安全に遊べる場所(公園、自然)、地域の子供向けイベントや支援体制などを確認します。同年代の子供を持つ家庭が多いかどうかも参考になるかもしれません。
- 医療・インフラ: 必要な時に利用できる医療機関(診療科、救急対応)、日常の買い物ができるスーパーや商店までの距離と利便性、交通網(公共交通機関、道路状況)、自治体サービス(ゴミ収集、図書館、体育館など)の充実度を比較します。
- 自然環境とレジャー: 地域の気候、自然の豊かさ(山、川、海)、趣味(アウトドア、文化活動など)を楽しめる環境があるかを確認します。家族がリラックスして過ごせる場所があるかどうかも大切な視点です。
- 家族それぞれのニーズ: 配偶者の仕事探しや働き方、子供の学校や友人関係、高齢のご家族のサポート体制など、家族一人ひとりの希望や課題を考慮に入れます。
これらの視点に基づき、各候補地で体験したことを具体的に記録・比較していくことが、後悔のない移住先選びにつながります。
複数候補地を巡ったAさんの体験談
都内のIT企業に勤務するAさん(30代後半、妻と小学生の子供2人)は、将来的な移住を視野に入れ、複数回のワーケーションを実施しました。当初は「自然豊かな場所で子育てしたい」という漠然とした希望から、3つの候補地(山間部の町X、海沿いの町Y、地方都市近郊の町Z)を選定しました。
最初のワーケーションは山間部の町Xでした。静かで自然に囲まれた環境は魅力的でしたが、インターネット回線が不安定な場所があり、オンライン会議中に接続が切れるという課題に直面しました。また、冬場の積雪による生活への影響も気になりました。地域の方々は温かく迎えてくれましたが、子供向けの習い事が少ない点が懸念されました。
次に訪れた海沿いの町Yは、景色も良く、新鮮な魚介類が手に入ることが魅力でした。インターネット環境は比較的良好でしたが、夏場は観光客が多く、落ち着いて仕事ができる環境を探す必要がありました。地域コミュニティは独特で、溶け込むには時間が必要だと感じたそうです。また、希望する学区の学校が小規模で、子供の友達作りに不安を感じたと言います。
最後に訪れた地方都市近郊の町Zは、自然もほどほどにありつつ、商業施設や医療機関へのアクセスが良いバランスの取れた場所でした。インターネット環境は全く問題なく、自宅以外にも複数のコワーキングスペースがあり仕事環境は充実していました。地域コミュニティは適度な距離感を保ちつつ、イベントなども行われており参加しやすそうだと感じたそうです。子供向けの習い事や塾も種類が多く、学校の規模も適当でした。一方で、土地の価格や家賃が他の候補地よりやや高い点が課題でした。
Aさんは、それぞれの候補地で感じた「仕事のしやすさ」「家族の過ごしやすさ」「生活の利便性」「地域との関わり」などを詳細にメモし、家族会議で共有しました。特に、仕事環境の安定性、子供の教育環境、そして家族それぞれの生活の満足度を重視した結果、最終的に町Zが最も自分たちに合っているという結論に至りました。
Aさんは「単に観光するだけでは見えなかった、日々の暮らしの中での小さな課題やメリットが、ワーケーションを通じて初めてリアルに理解できた」と語っています。「特に、子供がその土地で楽しそうに過ごせるか、妻が抵抗なく買い物をしたり地域の人と話したりできるか、といったソフト面は、実際に滞在してみないと分からない重要な点だった」とのことです。
比較検討プロセスを成功させるためのヒント
複数回のワーケーションで移住候補地を効果的に比較検討するためには、いくつかの工夫が役立ちます。
- 比較検討シートの作成: あらかじめ、重視したい項目(仕事環境、生活コスト、子育て環境など)をリストアップし、候補地ごとに点数やコメントを記録できるシートを作成しておくと、後で見返して比較検討しやすくなります。
- 家族全員で体験を共有: 家族それぞれが異なる視点を持つ可能性があります。毎日、その日気づいたことや感じたことを家族で話し合い、記録に残すようにします。
- 地域住民との積極的な交流: 地域のスーパーや商店を利用したり、公園で出会った人と話をしたり、可能であれば地域のイベントに参加したりすることで、ウェブサイトやガイドブックには載っていないリアルな情報を得ることができます。自治体の移住相談窓口を活用するのも良いでしょう。
- 短期滞在では見えにくい点の確認: 災害リスク、特定の季節の気候、交通渋滞の状況、地域のイベントスケジュールなど、短期間の滞在では把握しきれない情報は、地域のウェブサイトを確認したり、地元の人に尋ねたりして補完することが大切です。
まとめ
移住候補地の選定は、人生における大きな決断の一つです。情報収集だけでなく、実際にその土地で「暮らす」体験を重ねることで、見えてくるものは多くあります。特に、複数の候補地でワーケーションを実施し、様々な視点から比較検討することは、理想の移住先を見つけるための非常に有効な手段です。本稿でご紹介した情報や体験談が、皆様のワーケーションを通じた移住・二拠点生活の実現の一助となれば幸いです。