【体験談】失敗しない移住のために:ワーケーションで探る「デジタルワーク環境」と「生活インフラ」のリアル
移住や二拠点生活をご検討中の皆様、特にリモートワーク主体の働き方をされている方にとって、移住先のデジタルワーク環境や生活インフラは非常に重要な要素です。情報収集はインターネットでも可能ですが、実際に現地で体験することで見えてくるリアルがあります。今回は、IT企業に勤務しながら家族での移住を視野に入れ、ワーケーションで移住候補地の「デジタルワーク環境」と「生活インフラ」を徹底的に検証したご家族の体験談をご紹介します。
なぜワーケーションで「デジタルワーク環境・生活インフラ」の検証が必要か
リモートワークを継続しながら移住する場合、最も懸念される点の一つが、移住先のインターネット環境です。都市部と比較して、地方では通信速度や安定性に差がある可能性も考えられます。大容量データの送受信やオンライン会議が頻繁にある業務の場合、ネット環境の質は仕事の生産性に直結します。
また、デジタルワーク環境はネット環境だけでなく、電源の確保しやすさ、利用できるコワーキングスペースや公共施設の有無なども含まれます。これらの環境が整っているかどうかは、仕事の効率だけでなく、気分転換や地域交流の機会にも影響する可能性があります。
さらに、生活インフラも移住後のQOL(生活の質)に大きく関わります。スーパーや病院、学校、公共交通機関へのアクセス、災害時の情報伝達手段など、基本的なインフラがどの程度整っているかを実際に確認することは、家族で安心して暮らす上で欠かせません。オンライン診療の利用状況や、オンラインショッピングの配送日数といったデジタルと関連する生活インフラも、リモートワーカーにとっては確認すべきポイントとなるでしょう。
ワーケーションでの具体的な検証方法:Aさんご家族のケース
今回お話を伺ったAさん(30代後半、IT企業勤務)は、妻と小学生のお子さんとの3人家族です。地方への移住を検討しており、複数の候補地でそれぞれ1週間から2週間のワーケーションを実施されました。目的は、単なるお試し居住ではなく、移住後の「仕事の継続性」と「家族の生活の質」を保証するための具体的なインフラ検証でした。
Aさんご家族がワーケーションで実施した主な検証内容は以下の通りです。
- インターネット環境の徹底チェック:
- 滞在した宿泊施設や賃貸候補物件でのWi-Fi速度測定(複数の時間帯で実施)。
- 所有するスマートフォンのLTE/5G電波状況確認。
- ポケットWi-Fiやテザリングを利用した場合の速度・安定性確認。
- 地域の主要プロバイダの提供状況や評判の情報収集。
- ワークスペースの検証:
- 候補地にあるコワーキングスペースの利用体験(料金、設備、雰囲気、利用者層)。
- 図書館や地域の交流施設のワークスペース利用可能性の確認。
- カフェや公共スペースでの電源・Wi-Fi利用可否確認。
- 生活インフラの体感:
- 最寄りのスーパー、コンビニ、ドラッグストアへのアクセス方法と所要時間の確認。
- 地域の主要な病院や診療所の場所、診療時間、オンライン診療や予約システムの有無。
- 子供の学校や学童保育、習い事施設の確認とアクセス。
- 公共交通機関(バス、電車)の運行本数や利用状況。
- オンラインショッピングやフードデリバリーサービスの利用可能性と配送日数。
- 地域のハザードマップ確認と、避難場所へのアクセス経路。
- 自治体の防災情報発信手段(SNS、アプリ、防災無線)の確認。
Aさんは、これらの検証をノートに詳細に記録し、家族それぞれの視点からの感想や評価も加えていきました。「夫(Aさん)は仕事のネット環境、妻は買い物の便利さや病院、子供は学校や公園の楽しさ」といったように、家族それぞれのチェックリストを用意していたそうです。
体験を通じて見えてきたリアル:成功談、失敗談、想定外の出来事
Aさんご家族のワーケーションからは、オンラインの情報だけでは知り得なかった多くのリアルが見えてきました。
成功談:
- ある候補地では、賃貸物件の案内ではわからなかった地域の無料Wi-Fiスポットの充実ぶりを発見。公園や公共施設で気軽に仕事やインターネット利用ができることが分かりました。
- 別の候補地では、コワーキングスペースの運営者が地域情報に詳しく、移住者向けのコミュニティ活動も行っていることを知り、移住後の人脈形成や情報収集の拠り所になり得ると感じたそうです。
- 子供向けのオンライン学習サービスや通信教育に必要なネット環境が、想定以上にスムーズに利用できる地域があったことも大きな収穫でした。
失敗談・想定外の出来事:
- 写真では高速回線対応とされていた賃貸物件が、実際に速度測定してみると時間帯によって不安定になることが判明しました。不動産業者にも確認しましたが、地域全体の問題というよりは建物や特定の時間帯に利用が集中するため、ということが分かりました。もしワーケーションで確認していなければ、移住後に仕事に支障が出ていた可能性が高いとのことでした。
- オンライン地図上では近くに見えた病院が、実際には道が狭く歩道もないため、小さな子供を連れて歩くのは危険だと感じたそうです。公共交通機関も便数が少なく、結局車での移動が必須となることが分かりました。
- 地域の情報発信が限定的で、SNSやWebサイトだけでは最新のイベント情報や行政の細かなサービスが把握しにくい地域もありました。直接地域の掲示板を見たり、交流施設で聞いたりする必要があることを体感しました。
このようなリアルな体験を通して、Aさんご家族は「ネット環境の数値だけでなく、体感としての安定性や時間帯による変動」「地図上の距離と実際の移動のしやすさ」「オンライン情報とオフライン情報の乖離」といった、事前の情報収集だけでは見落としがちな重要な側面に気づくことができたと仰っていました。
ワーケーションで得た検証結果の評価と次のステップ
ワーケーションでの検証結果を踏まえ、Aさんご家族は移住候補地を詳細に評価しました。
デジタルワーク環境については、期待通りの速度と安定性があるか、バックアップ手段(ポケットWi-Fiなど)が有効か、代替となるワークスペースがあるか、といった観点から点数をつけました。生活インフラについては、家族の各メンバーにとっての利便性、特に病院や学校へのアクセス、災害リスクへの備えなどを重視して評価しました。
その結果、当初最も有力視していた候補地が、ネット環境の不安定さと生活インフラの不便さから優先順位を下げざるを得なくなったそうです。一方で、別の候補地は、インフラ面では若干の妥協点があったものの、地域のサポート体制やコワーキングスペースが充実しており、総合的に移住後の生活イメージが描きやすいと判断しました。
Aさんは、今回のワーケーションでの徹底したインフラ検証が、移住後の後悔を防ぐ上で非常に有効だったと述べています。単に雰囲気や環境が良いというだけでなく、具体的な仕事と生活の基盤が整っているかを肌で感じることが重要だと強調されていました。今後は、絞り込んだ候補地で、さらに詳細な聞き込みや地域のコミュニティへの参加を試みるためのワーケーションを計画されているとのことです。
まとめ:移住成功への鍵は事前のリアルなインフラ検証にあり
移住や二拠点生活は、新しい暮らしへの期待とともに、多くの不安も伴います。特にリモートワーカーにとって、仕事の継続を左右するデジタルワーク環境と、家族の安心な暮らしを支える生活インフラは、移住先選びにおいて決して疎かにできない要素です。
ワーケーションを単なる観光や気分転換としてではなく、「移住後のリアルな生活を体験し、具体的な課題を検証する機会」として活用することで、オンラインの情報だけでは見えてこない大切な側面に気づくことができます。今回ご紹介したAさんご家族のように、具体的な検証リストを用意し、家族で協力しながら現地を体感することは、移住の成功確率を高めるための非常に有効な手段と言えるでしょう。
移住を検討されている皆様も、ぜひワーケーションを通じて、候補地のデジタルワーク環境と生活インフラをリアルに体験し、ご自身やご家族にとって最適な場所を見つけてください。