夫婦で考える移住ワーケーション:互いのキャリアと暮らしの希望をすり合わせる体験談
移住や二拠点生活をご検討されているリモートワーカーの皆様、こんにちは。「ワーケーション移住スタイル図鑑」編集部です。このサイトでは、移住や二拠点生活に向けたワーケーションの多様な活用事例と体験談をご紹介しています。
特にご家族での移住を検討されている方々にとって、移住先での仕事との両立や生活の変化、地域コミュニティへの適応など、様々な不安や疑問があることと思います。中でも、ご夫婦で異なるキャリアやライフスタイルに関する希望をお持ちの場合、どのようにそれらをすり合わせ、共通の理想を見つけていくかは、移住成功の鍵となります。
今回は、ワーケーションを夫婦間の意見交換や候補地のリアルな体験に活用し、互いのキャリアと暮らしに関する希望をすり合わせた事例をご紹介します。
移住検討、まず直面する「夫婦間の希望の違い」
リモートワークの普及により、働く場所の選択肢が広がり、都市部から地方への移住や多拠点生活が現実的な選択肢となりました。特に30代後半でIT企業にお勤めの方々にとって、キャリアを継続しながら、自然豊かな環境で子育てをしたい、通勤時間をなくして家族との時間を増やしたいといった希望をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、移住を検討し始めると、ご夫婦の間で理想とする暮らしや仕事の条件に違いがあることに気づくことがよくあります。
- 夫の希望: 自然豊かな場所で子育てをしたい、趣味(釣り、キャンプなど)を楽しめる環境が良い、仕事部屋は静かで広いスペースが欲しい。
- 妻の希望: これまでのキャリアを継続したい、スキルアップできる機会があるか、子どもの教育環境はどうか、買い物の利便性や医療機関の充実はどうか。
このように、キャリア、子育て、趣味、生活の利便性など、重視する点が異なるのは自然なことです。これらの希望を明確にし、互いに理解し合うことが、移住計画の第一歩となります。
ワーケーションを「夫婦対話の場」として活用する
移住検討における夫婦間の意見のすり合わせに、ワーケーションは非常に有効な手段となり得ます。単に候補地を訪れるだけでなく、その土地での「暮らし」や「働き方」を夫婦で共に体験し、話し合う機会を意識的に設けることが重要です。
Aさんご夫婦の事例:キャリアと子育て環境、互いの希望をどう両立させたか
都内のIT企業に勤めるAさんご夫婦(夫38歳、妻37歳、小学生のお子さん1人)は、将来的な移住を検討していました。夫は自然が身近にある環境で子育てをしたいと考えていましたが、妻はこれまでのキャリアを継続し、リモートワークだけでなく将来的な転職や複業の可能性も視野に入れていました。
当初、夫は地方の自然豊かな地域を、妻は主要都市へのアクセスが良い郊外や地方都市を候補として考えており、意見が分かれていました。お互いの希望を理解はしていましたが、具体的なイメージが湧かず、話し合いが平行線になることもあったそうです。
そこでAさんご夫婦は、候補地を数ヶ所に絞り、それぞれ1週間程度のワーケーションを計画しました。ただ観光するのではなく、以下のような目的を持って滞在したそうです。
- 夫: 現地でのリモートワーク環境(通信速度、作業スペース)の確認と、退勤後の自然の中での過ごしやすさを体験する。
- 妻: 地域のコワーキングスペースや図書館の雰囲気、地域のコミュニティ活動や習い事の情報収集、教育機関の周辺環境を確認する。
- 夫婦共通: 現地のスーパーや医療機関、交通網などの生活インフラを確認し、住民の方々と交流する機会を探す。
ある候補地でのワーケーション中、夫は理想的な作業環境と、窓から見える自然に癒やされ、集中して仕事に取り組むことができました。一方、妻は地域のコミュニティスペースで、移住してきたばかりの方々が立ち上げたプロジェクトの話を聞き、新たな働き方や人との繋がりがあることを肌で感じたそうです。また、お子さんも現地の短期プログラムに参加させ、地域の雰囲気や子どもたちの様子を観察しました。
ワーケーション中や夜の時間は、その日体験したことや感じたことを夫婦で共有しました。「この地域の自然は素晴らしいけれど、スーパーまで車で30分かかるのは大変だね」「あのコワーキングスペースは集中できそうだけど、通勤時間が発生する可能性のある仕事には向かないかな」など、具体的な視点でお互いの意見を交換しました。
この体験を通じて、夫は「自然豊かな場所」の中でも、生活の利便性がある程度確保されていることの重要性を再認識しました。妻は「キャリアの継続」について、リモートワークだけでなく、地域での人脈やスキルを活かした新しい働き方の可能性に気づき、選択肢が広がったと感じたそうです。
結果として、当初考えていた候補地とは別の、自然がありながらも地域経済が活性化しており、多様な働き方やコミュニティ活動がある地方都市を共通の候補地として絞り込むことができました。
ワーケーションで夫婦間の意見をすり合わせるためのポイント
Aさんご夫婦の事例から、ワーケーションで夫婦間の意見を効果的にすり合わせるためのポイントが見えてきます。
- 目的意識を持った計画: 単なる休暇ではなく、「移住後の生活を体験する」「互いの希望を具体的に確認する」という目的を共有し、滞在中に何を体験・確認するかを事前に話し合って計画します。
- テーマ別の体験と共有: 仕事環境、子育て環境、生活利便性、地域コミュニティへの参加など、夫婦それぞれの関心事や懸念事項に関する体験機会を意図的に設けます。そして、その体験で感じたことを具体的に共有し、意見交換を行います。
- 「良い点」だけでなく「気になる点」も共有: 候補地の魅力だけでなく、懸念される点や不便に感じた点も正直に話し合います。これにより、理想と現実のギャップを埋め、妥協点を見つけやすくなります。
- 話し合いの時間を確保: ワーケーション中は仕事とプライベートが混在しがちですが、意識的に夫婦で移住についてじっくり話し合う時間を確保します。美味しい食事を共にしながら、リラックスした雰囲気で語り合うのも良いでしょう。
- 子どもの意見も尊重: お子さんがいる場合は、お子さんがその地域をどう感じたか、どんなことに興味を持ったかを聞いてみることも大切です。家族全員が納得できる選択肢を見つけるためには、子どもの視点も欠かせません。
直面しうる課題と乗り越え方
ワーケーションでの意見すり合わせにおいても、いくつかの課題に直面する可能性があります。
- ワーケーション中に意見が対立した場合: どちらかの希望する条件がどうしても満たされない場合など、話し合いが進まなくなることもあります。感情的にならず、一度距離を置いて冷静に話し合う、または「これは譲れない条件か」「代替案はあるか」といった視点で、建設的に対話を進めることが大切です。必要であれば、外部の相談窓口を利用することも考えられます。
- 期待値のずれ: ワーケーションは「お試し移住」ですが、短期間の滞在で得られる情報には限りがあります。理想化しすぎず、現実的な視点を持つことが重要です。「完璧な場所はない」という前提で、夫婦にとって最も優先順位の高い条件を満たせる場所を探すという姿勢が役立ちます。
- 時間や予算の制約: 複数の候補地をじっくりワーケーションするには、時間も費用もかかります。事前に情報収集をしっかり行い、優先順位の高い候補地から試す、短期間でも密度濃く体験を詰め込むなど、工夫が必要です。
まとめ
移住は人生における大きな変化であり、ご夫婦で協力して進めるプロセスです。特に互いのキャリアや暮らしに対する希望が異なる場合、丁寧な対話と情報収集が不可欠となります。
ワーケーションは、候補地のリアルな環境を体験するだけでなく、ご夫婦が共に時間を過ごし、互いの価値観や希望について深く話し合うための貴重な機会を提供します。この機会を最大限に活用し、理想と現実のバランスを取りながら、ご夫婦にとって最良の移住スタイルを見つけていただければ幸いです。
ワーケーションを通じた体験談は、皆様の移住・二拠点生活検討における具体的なヒントとなるはずです。ぜひ、ご夫婦で計画を立て、第一歩を踏み出してみてください。